マルキチとほや

「リアスの詩 さんまこぶ巻」と並んで、マルキチ阿部商店もうひとつの元祖は「ほやたまご」です。

ほやたまごは、もともと女川で昔から作られてきた郷土料理で、広げたほやに卵をまるごと包み込んで甘辛く煮詰めたものです。マルキチ阿部商店ではこの家庭の味を再現し、常温保存できるように研究を重ねて商品化しました。切った時のインパクトや意外な組み合わせから、メディアやSNS上でも取り上げて頂いています。

そもそも「ほや」とご縁がなかった方も多いかもしれません。殻の見た目から「海のパイナップル」と称されるほやは宮城県の特産品で生産量は全国一。女川湾でも養殖されています。色鮮やかな剥き身は独特の豊かな旨みを持ち、地元ではなじみの深い食材です。

自分たちは当たり前のように食べているほやですが、新鮮さが味を決めるため、時間がたつと生臭さが強くなって味が変わってしまいます。当社でも町内に向けては生ほやの扱いをしていましたが、当時の流通では鮮度を保って築地に届けるのは至難の業。なんとかして地元で食べるほやの美味しさを多くの人に届けたいと、ほやを素材とした商品開発に取り組みはじめました。

ありがたいことに人気商品となった「ほやたまご」に加え、現在ではひとくちサイズの「うずらのほやたまご」や佃煮風の「ほや煮」、そのままプレスして焼いた「さきほや」などの加工品を販売しています。冷凍では「蒸しほや」や「ほやの塩辛」などもご用意しています。ほやをご存じの方でも新しい発見があればうれしいです。

全国的にはまだ認知の少ないほやですが、「ほやたまご」のように新しい商品をつくりだすことで、たくさんの食卓に女川のほやが並ぶ機会が広がることを願っています。失敗を数えたらきりがありませんが、できることは何でもやってみようと、今もさまざまな商品や調理法に挑戦しています。新しい食材に興味をお持ちの事業者の方も、ぜひマルキチにお声がけください。技術や経験を持ち寄って、ほやの可能性を拓くことができれば何よりです。